● | 浜岡原発停止 |
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菅首相の要請を受けて、5月9日、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は全面運転停止を決定した。東海地震の震源域の活断層に位置しており、津波対策の防波堤などが完備するまで2〜3年の停止を目論んでいる。
全国の原発17ケ所・54基のうち稼動は25基、定期検査中が10基、停止18基(福島第一、第二含み)。全発電電力量の約30%が原発でまかなわれている。全てを代替できる電力供給源は見当たらない。
浜岡対応により、定期検査入りで停止中の原発の運転再開にもハードルは高くなった。地元の理解を得るうえでも、浜岡停止の要請に至った判断の影響は大きい。
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● | 電力各社の対応 |
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浜岡原発分の電力量は362万kWで、全供給量の13%で停止後の電力不足が懸念される。中電は休止中の武豊火力など5ケ所6基ある火力発電所の運転再開や東電への電力融通の75万kWの停止など、120万kWの確保を検討している。
電力各社とも、原発の代替として、火力発電に頼らざるを得ない。そのなかで石炭や石油に比ベ二酸化炭素の排出量の少なく、比較割安な液化天然ガス(LNG)を軸に安定調達を図っている。ただ化石燃料によるコスト増は必至である。
中電は企業努力を追求して、現時点では電力料の値上げや計画停電などは考えていない、と表明。
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● | 中部の企業の捉え方 |
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中部地区は日本の基幹産業の集積地だけに、電力の供給不足は今後の経済の成長戦略に大きな障害になる。中部経済3団体は、計画停電さえ回避できれば、各業界、団体、企業ともに影響を見極めて、可能な限り節電協力する姿勢にある。「電力対策自主行動計画」を策定し、基本的には政府に対する協力姿勢をとりながら、各社の状況に応じた節制目標を設定し実施する動きにある。ものづくりで産業を牽引する地域だけに、新たな工夫が生まれることが期待される。
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● | 政府の考え方 |
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政府は「2030年までに総電力量に占める原発の比率50%以上を目指す」とした現行のエネルギー計画については白紙に戻し、再生可能エネルギー(自然エネルギー)を基幹エネルギーに加え、省エネルギーとの2つの柱に力を注ぐとしている。8%の電力を供給する水力発電にしても、すでに大規模開発の余地は少なく、再開発策はとらない。
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● | 地元の立場 |
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浜岡原発及び地元関連会社の従業員は2881人、このうち御前崎市民は1232人で43%を占める。
御前崎は原発でもっている街。雇用と地元経済にしわ寄せが大きい。地域への社会・経済対策は避けられない。
さらに運転再開問題は、いちはやく中長期的な安全対策を実施しないと地元に迷惑がかかる。
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● | IPEC・気候変動に関する政府間パネルの発表 5月9日 |
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再生可能エネルギーは、最大で2050年の世界のエネルギー消費の77%を供給できる可能性があり、温室効果ガスの排出削減に貢献できるとの特別報告書を発表した。
それによると、太陽光、風力のほかバイオマスや地熱、小規模な水力発電、波力、潮力といった海洋エネルギーなどについて、今後の成長の可能性を技術面と経済面から検討。さまざまなシナリオに基づいて50年までの推移を予測した。30年に世界のエネルギー消費の43%、50年には77%を供給できるとの結論が出た。
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● | 夏の節電15% |
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経済産業省は、東京電力、東北電力管内で大口需要家(契約電力500万kWの工場など約2万件)を対象に、昨夏ピーク時に比べ、原則15%の制限を要請した。期間は7月1日から東北電は9月9日、東電は9月22日まで、平日午前9時から午後8時に目標達成を義務づける。電力使用制限違反には、100円万以下の罰金を科すことになる。
ただし、制限の緩和対象はあり、節電幅は0%、5%、10%の3段階。適用除外は、病院、鉄道、データセンター、クリーンルーム、電解工場など半導体・金融・通信などの連続操業の業態、被災地の復旧に不可欠な施設など約30分野。
東電管内で今夏に予想される最大電力需要は6000万kW、企業や家庭に一律15%900万kW節電を要請している。
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● | 企業側の対応 |
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電気・電機・通信分野では、7〜9月の3ケ月間、生産拠点の休日を平日に振り替えて輪番操業をする。従業員の夏季休暇も7〜9月の期間に分散する。日本自動車工業会加盟13社は、工場の休日を土・日から木・金に変更する。土日以外に休業する週休3日制、就業時間を1時間前倒しするサマータイム、夏季休暇の延長など。企業間の協力も広がりつつあり、政府は、企業が拠点や生産を移転した場合も管内の使用電力を削減したとみなす。従って西日本へ移転するケースが進んでいる。
節電目標の3分の2を占める小口需要家や家庭には、法的強制力が及ばないため、協力が得られる啓発活動が急がれる。さらに日銀は15%の節電に達成できれば、域内の実質GDPを0.3%押し下げることになる、と踏んでいる。
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● | 中電管内の節電 |
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浜岡原発3号機(出力110万kW)相当の節電が要請されている。大口需要家の自主計画とは別にオフィスビル、商業施設の節電を呼び掛けている。照明の利用を3割間引くと60万kW、クールビズの励行で冷房の設定温度を1度上げると16万kW、パソコン・事務機の使用制限で13万kW、エレベータ・エスカレータ稼動を3割抑制で6万kW、業種ではオフィスビルで46万kW、百貨店、スーパー、コンビニなどの商業施設は29万kW。
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● | 節電に工夫を |
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オフィスビルでは、照明が3割、エアコン・エレベータが3割、パソコンや事務機が4割を占めます。
パソコンの省エネ |
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出掛ける時や100分以上使用しない時はOFF。 終業時には本体もOFF。パソコン本体、特にファン部分のほこりをクリーナで除く。液晶モニターの明るさ(輝度)を下げる。
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エアコンの省エネ |
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エアコンは単体で最も電力消費が大きい。家庭では25%を占める。 夏の節電温度は28度とされているが、もう1度上げて29度にしてみる。1度上げると10%節電になる。
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LED照明省エネ |
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寿命は4万時間で、白熱電球に比べ寿命は40倍、消費電力は約7分の1、蛍光灯に比べても寿命は4〜7倍、消費電力は最大半分になる。価格は約3〜10倍と初期費用はかかる。
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(日経、産経、読売、中日の記事を引用 (株)太田廣 太田義知)
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ベクレルとシーベルト
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福島第一原発の事故を機に、厚労省は放射性物質の暫定規制値を定めた。放射性ヨウ素は年50ミリシーベルト(5万マイクロシーベルト)以下、放射性セシウムは5ミリシーベルト(5000マイクロシーべルト)以下なら安全との見解を示した。
その数値を基に食品ごとに規制値が設定された。ヨウ素では、飲料水や牛乳は1キロ当り300べクレル、野菜、魚介類は2000ベクレル、セシウムでは、飲料水や牛乳は200ベクレル、野菜や魚は500ベクレル。
ベクレルは放射性濃度を表す単位、シーベルトは人体が放射線を受けた時の影響を表す単位。
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簡易換算式は 放射能濃度(1キロ当りのベクレル)×実効線量係数
×1日当りの摂取量(キロ)×摂取日数
実効線量係数は放射性物質ごとに異なる。
ヨウ素131 |
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0.022 マイクロシーベルト (1ベクレルあたり) |
セシウム137 |
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0.013 マイクロシーベルト (1ベクレルあたり) |
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2000ベクレルのヨウ素が検出されたホウレンソウを100グラム食べた場合、2000×0.022×0.1 = 4.4 マイクロシーベルトとなる。1年食べ続けると1606マイクロシーベルトと、ヨウ素規制値の31分の1になるが、机上の計算だけでは安心できない。
ただちに健康への影響はない、という言い回しは、被曝によってすぐに白血病やがんにならないというだけで、中長期的な影響には言及していない。原発事故が長引けば、多くの食品や飲料水が汚染され経口や吸引する恐れがある。ヨウ素131は甲状腺がんの、セシウム137はがんや遺伝障害の原因になる。
10年後にがんになっても、東電や政府は放射能との因果関係について責任をとるだろうか。米国の科学アカデミー委員会は05年、最小値の被曝でも人類に危険を及ぼす可能性があると報告している。
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